セルフ統合の誤解とその反動──ユング心理学で読み解く“予告的ヴィジョン”の意味
🌀「あれは統合じゃなかった」──セルフとの“予告的接触”と、その反動としての混乱
あのときボクは、「すべてが澄みきった」と感じていました。
恐れも混乱も消え、自分が広大な何かとつながっている感覚。
あの万能感のような静けさに、ボクは「ついにセルフと統合した」と思い込んだのです。
でもその後、何度も揺り戻しがやってきました。
根拠のない不安、急激な沈み込み、何も手につかなくなる日々。
自分が壊れていくような感覚。
今になってようやくわかってきました。
あの体験は「統合」ではなく、無意識から与えられた“予告”だったのだと。
🌌 一瞬だけ触れた、象徴的な中心
ユング心理学では、無意識の中心=セルフとの接触が一時的に訪れることがあります。
それは「予告的ヴィジョン」とも呼べるもので、自我にとっては圧倒的すぎる啓示です。
ボクが感じた“澄みきった心境”や“全能感”は、まさにその接触の痕跡でした。
しかしそれが自我にとって未消化のまま起こると、いわゆる「inflation(自己肥大)」が起きる。
つまり、自我がセルフのエネルギーに取り込まれたような状態。
そしてその反動として、現実感の喪失や抑うつ、不安が波のように押し寄せてきたのです。
💥 「崩れる」こともプロセスの一部
今のボクなら、こう言えます。
あれは「偽り」ではなかった。
でも「完了」でもなかった。
むしろ、それは無意識からの方向を示す象徴的なメッセージであり、
「これがあなたの歩むべき道ですよ」と告げるヴィジョンの閃光だったのです。
ボクがその光に手を伸ばしたのは自然なことでした。
でも、その光を地に下ろし、ボク自身の現実として育てていくには、
まだまだ時間と忍耐と、繰り返しのらせん的な往復が必要だったのです。
🌱 今は、「そのヴィジョンをどう育てるか」の段階
今のボクは、あのとき見たヴィジョンを現実に根づかせる作業に入っています。
静かな時間を過ごすこと。夢に耳をすますこと。心身の調子を整えること。
何より、自分の影の部分──怖れや未熟さにも少しずつ光を当てていくこと。
つまり、セルフとほんとうに関係を結びなおす準備を、今あらためて始めているのです。
🔄 統合とは「地に足のついた幻」から始まる
ボクが一度見たヴィジョンは、たしかに本物でした。
けれど、あのままでは“幻のまま”で終わってしまう。
だから今、ボクはそれを“地に足のついた幻”として、少しずつ育てていこうと思います。
幻想と現実、天と地、光と影──そのどちらにも軸足を置きながら。
らせんの道は、また始まったばかりです。
でも今度は、足元の土の手触りを忘れずに、進んでいこうと思います。
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